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ボジョレー・ヌーボーの女 ~淡く切ない恋の結末~

ワイングラス

ボージョレ・ヌーボーの解禁日は11月の第3木曜日と決まっているそうだ。

 

僕には、この時期になると決まって思い出すことがある。

今時、B級ドラマにさえならない様なありふれた話だが、僕にとっては今でも淡く切ない思い出だ。

 

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出会い

14年前の春。

オフィスビルの一角に入っているITベンチャーに就職した僕は、1人の女性と出会う事になる。

サラリとしたロングヘアー、色白で薄らと赤みを帯びた頬とプックリした唇、ノリが良くて、何よりよく笑う。そんな女性だった。

その女性

彼女も同じオフィスビル、同じフロアーの別のIT企業に勤めていて、同じ年頃、同じ業種という事もあってか、僕達がリフレッシュコーナーで顔を合せる度に他愛無い会話を交わす様になるのに、さほど時間はかからなかった。

そこから次第に親密となっていくにつれ、一緒に酒を飲んだりするようになっていく。

といっても、残念ながら互いに異性として意識する事もなく「ただの飲み友達」としての関係が暫く続く事になる。

 

接近

そんな出会いから4年と半年ほど経った頃。

僕は彼女から相談を受けていた。

相談の内容は、平たく言えば「男女間のイザコザ」、「分かれる云々」といった類の話だ。

 

と来れば、その後の展開は想像が付くと思う。

 

相談に乗っているうちに、その流れで互いに惹かれ合うようになる。

まぁ、大人の男女の間では、よくある場面だろう。

 

僕らも、その例に漏れず。二人の仲は自然と進展していった。

 

ボジョレ・ヌーボー

僕達がそういう関係になった、ちょうどその時期。

空気の冷たさは冬の到来を感じさせ、町は少しづつクリスマス向けて色付き始めていた。

 

慌ただしい町の喧騒を横目に、彼女の家に向かう途中。

「せっかく付き合いだしたのだし。記念にちょっと洒落た酒でも持っていくか。」

そう思ったものの、ワインやシャンパンをたしなむ様なイケてる男ではなかった僕は、その日がボージョレ・ヌーボーの解禁日と重なっていたのを思い出し、それを持参することにした。

ボジョレー

僕もボジョレーはこの日が始めてだったが、どうやら彼女も始めてだったらしく、ことのほか喜んで貰えたのを覚えている。

 

ワイングラスを傾けながら、

「これからも『人生で初めて』を二人で、いっぱい経験して行けたら良いね。」

そんな彼女の言葉に、僕も笑顔を返していた。

 

別れは突然に・・・

それから半年ほど経った頃、僕は突然彼女に別れを告げられる。

今では、ハッキリとした理由さえ覚えていないが、僕に非が有った。彼女に不安を与え続けていた。そんな内容だったのは確かだ。

 

そして、その日の夜もまた僕らは一緒に飲んでいた。

飲み友達から始まった僕らが、飲み友達に戻るための儀式だったのだろうか。

 

たった半年。

そう。

たったの半年ではあったけど、その間に二人で作った沢山の思い出、沢山の「人生で初めて」を思い出し、記憶をさかのぼっては、涙ながらに語り明かした。

そして最後に。

最初に二人で経験した「人生で初めて」。ボジョレーの話をし、そして僕らは互いに「サヨナラ」を言った。

 

ただただ、涙が止めどなく溢れ、止まらなかった。。。[了]

 

あとがき

いかがだったでしょう。

以上が、僕がこのボージョレ・ヌーボーの解禁日が近づくと必ず思い出してしまう、淡く切ない思い出です。

 

が。

 

実はこの後、二人は見事にヨリを戻す事に。

そして、あの「涙の別れ話」から10年。

彼女は、今でも僕と生活を共にしてくれているというオチです。

(あ、苦情は受け付けてませんのでアシカラズw)

 

さて、明日はボジョレー解禁日。忘れずに買って帰るとしよう。^^

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