ご存じの通り、Apple社は、日本時間9月10日2時より新製品発表会をカリフォルニア州クパチーノで開催した。
今回の目玉は
- iPhone 6
- iPhone 6 Plus
- Apple Watch
の3つで間違い無いだろう。
そして、これら3つの製品は、予想通りの素晴らしいものに仕上がっていそうだ。
そこに何の問題があるのだろうか。
そこの話題に行く前に、まずは、新製品発表会の内容に簡単に触れておこう。
順当に進化したiPhoneシリーズ
Appleは、iPhoneシリーズのディスプレイサイズを市場ニーズに合せる方向で大型化するとともに、ディスプレイサイズに初めて2つのバリエーションを持たせた。
また、記憶容量面(128GBモデルの投入)、計算能力面(A8チップ、M8プロセッサの搭載)、解像度(フルHD)など、全体的に強化されている。
その他、VoLTE対応、カメラ・写真機能の強化、NFC搭載(お財布携帯への対応)などなど。
これらの機能強化により、Android製品に開けられていた溝を完全に埋めたと言えよう。
Apple Watchで、ついにウェアラブル市場に参入
Apple謹製のウェアラブル製品を待ち望んでいた方も多いだろう。
そして、この度発表されたApple Watchは、デザイン面でもとても洗練されており、従来のスマートウォッチとは一線を画している(Moto360は除くが)。
これでキワモノ扱いされる事を気にせず普段使いができるだろう。
また、機能面でも他のスマートウォッチに見劣りする部分は何一つ無い。
むしろ、他のスマートウォッチの良い所を詰め込んだ感さえある。
この様に、Apple Watchは、ファンの間で「Appleを身に付けよう」がスローガンに成りそうなほどの仕上がりだ。
以上を見るに、Apple社は順当かつ適切な戦略を持って市場に向かっていることが見て取れる。
そこに潜む大きな問題
それでもなお。
ジョブズが亡くなった今、彼の抜けた穴は大きいと感じざるを得ないのは僕だけだろうか。
問題1: Apple社は、いつからスマホ市場で追う側に回ったのか
今回の新製品投入で、AppleはAndroid製品に開けられていた溝を完全に埋めた。
それは順当な戦略である。
と同時にAppleは、残念ながら、さらに突き抜けた何かを示す事はできなかった。
今回の発表会で、Appleが「追う側に回った」事が明確になったとも言える。
問題2: ウェアラブル市場参入も、重要なポイントを欠く
では、もう一つの焦点に移ろう。
この素晴らしいApple Watchには一体、何が欠けているのだろうか。
それは、ジョブズが顕在だったとしたら、Apple社内に、そして僕たち市場にむけて発したであろう、たった一つの重要な質問だ。
Why the watch?(なぜ時計なのか?)
僕たちは、既にスマートフォンを持っている。
そして、それはいつでも取り出しやすい位置に陣取っているはずだ。
更に、Apple Watchが収まろうとしている場所は、すでに別の何か(腕時計やウェアラブルガジェット)に占領されている。
それでもなお。
Why the watch? Becouse…
残念ながら、僕には、その答えは出せそうもない。
ただ、その質問の答えこそ、僕たちの多くが未だにスマートウォッチを身に付けていない理由だと思う。
できれば、ジョブズのプレゼンで、その明確な理由、明確な未来像を聴きたかった。
果たして、Appleはどこに向かうのか
この状況、この流れ。
Appleは大丈夫なんだろうか。あの当時の二の舞にはならないか。
そんな不安を感じざるを得ない。
これは、PC業界に長らく触れてきた方はピンと来るかもしれない。
- ジョブズの不在。
- 追われる側から、追う側へ。
- 市場を押さえ切れない製品の投入。
そう。
Macintoshの成功から、それ以降の低迷期を想起させはしないだろうか。
もちろん当時とは違い、市場はより大きなものに成長したし、Appleは既に大きなシェアを確保している。
そう簡単に当時の轍を踏むとも思えない。
だが。
それでもなお、「このままでは、、、」という不吉な予感がよぎってしまう発表会だったのだ。
そしてジョブズは、もう居ない。
最後に
この先、市場が今回の新製品発表会の内容をどう受け止め、投入された新製品の売れ行きがどうなって行くのかは、僕にも正確には解らない。
あくまで推測の範疇ではあるが、恐らく、iPhoneシリーズは順当に旧端末から置き換わって行くだろうし、Apple WatchもコアなAppleファンたちに受け入れられるだろう。
だが、今回発表されたiPhoneシリーズにはAndroid端末のシェアを喰って行けるほどのインパクトは感じられないし、Apple Watchがキャズムを越えるとも到底思えない。
そんな印象に無駄な不安を感じただけなのかもしれない。
あなたは、今回の製品発表会を、どう受け止められただろう。
そして、この記事を読んでどう感じただろう。
できることなら、この記事が僕の杞憂に終わってくれれば良いと願うばかりだ。