あれは1ヵ月ほど前。
周囲で、にわかにオンラインサロンを始めるブロガーが増え始めていた。
ちょうどそのタイミングで、某オンラインサロンが追加メンバーの募集をしている事を知り、ここに潜入捜査することを決めたのだ。
もちろんこの時点では、まだそれが「サロンという名の塾」なのか、それとも「コミュニティービジネス」を志向したものなのか、その実態は良く解ってなかったが。
本題に入る前に、まずは僕がオンラインサロンへの潜入を決めた理由について触れておくとしよう。
邂逅
世の中には様々なビジネスがある。
それは、個人でやっている副業レベルのものから巨大ビジネスまで様々だが、その根幹を概略化すれば、「欲しい人に、欲しい物を売る」ということになる。
まぁ、当たり前の話だが。
だから、ビジネスの主題は長きに渡り「自分の商品・サービスが欲しい人に、いかに出会うか」という部分、言い換えれば「集客」こそが主要テーマだった訳だ。
ところが、その一方で現代の日本においては「そもそも欲しいモノがない」という人で溢れているという現実がある。
このギャップを埋めるために色々と工夫を凝らすのが、現代日本におけるビジネスの一つの側面であり、その工夫にも様々なアプローチがあるはご存じの通り。
その1つ1つを語るのは本項の趣旨から外れるため割愛するが、重要なアプローチの1つに「コミュニティ形成」というのがある。
要は、顧客からエンゲージメント(訳すと「愛着心」や「思い入れ」といったイメージ)を獲得することで、顧客との関係を構築し、第一選択肢に入ろうとする手法だ。
個人的に、この「エンゲージメントの獲得」や「コミュニティ形成」は今後ますます重要になってくると思っていて、情報や実例を集めては分析している。
(もちろん今でもエンゲージメントの獲得は十分に重要視されているが)
今回のオンラインサロン潜入捜査は、いわばその「コミュニティ形成」研究の一環でもある。
それでは本題の「オンラインサロンのインフラ部分」についてレポートしていこう。
運営環境(インフラ)の概略
今回潜入したサロンは、Synapse(シナプス)というオンラインサロン・プラットフォームを使って運営されている。
という訳で、その実態は「Facebookグループ」ということになる訳だが、Synapseを利用することで、以下の煩雑な作業はSynapseに任せているという構成だ。
- ユーザーサポート: 各種問い合わせ対応
- サロン管理: 入退会の処理
- 決済処理: 月額会費の決済・返金処理
- イベント開催支援: 企画の相談、会場探し、当日運営、会員向けストリーミング配信の手配等、支援など。
参考:Synapse(シナプス) – オンラインサロン・プラットフォーム
以下、インフラについて感じたことを書いて行く。
Synapse利用のメリットは・・・
Synapse利用については、煩雑な事務作業を外注化できる点がメリットになるだろう。
問題は、それにどれだけ費用がかかるかだが、現在、Synapseのサイト上には「決済手数料・プラットフォーム利用料」とあるだけで具体的な数字は出ていない。
そこでInternet Archiveから2015年3月時点でSynapseが掲載していた情報を引っ張ってみた。
ここから読み取れる手数料は、売上の20%。
この金額をどうみるかは集客数にも寄るのかもしれないが、サロンの会費を仮に5,000円とすると1人当たり1,000円も徴収される事になる。
この条件で100人のメンバーを集めたとしたらSynapseに月々10万円を支払うことになる訳だ。
この金額なら普通にバイトを雇って他の作業もやって貰いながら、そのついでに入金確認や退会通知などもやって貰えるんじゃないだろうか。。。
あるいは、そのお金でサロンメンバーへの提供価値を上げるという方向も考えられる訳で、あえてSynapseを利用する意義は見出せなかった。
(実は僕が知らないメリットが有るのかも知れないが・・・)
ちなみに月額会費の決済・返金処理だけならPayPal(ペイパル)という代替え手段があるので月額課金のサービスを考えているなら覚えておいて損は無い。
(決済手数料は約4%程度)
Facebookグループは・・・
次に、コミュニケーションのインフラとしてのFacebookグループのメリット・デメリットについて見て行こう。
Facebookグループのメリット
僕自身、これまでに、いくつかブロガー・コミュニティに参加させて貰った経験がある。
これらのコミュニティで利用されていたインフラには、例えば、
・LINEグループ
・TwitterのグループDM
・Wordpressを使った仮想SNS(BuddyPressとbbPress)
などがあったが、これらのインフラと比べてFacebookグループを使うメリットと感じたポイントを2点ほど上げておこう。
1点目は「1投稿1スレ」という点。
Facebookグループでは、投稿に対して個別に返信が可能となっており、1つの投稿が1つのスレッドの様な感覚で利用できる。
これがTwitterのグループDMやLINEグループになると、発言やレス(回答)が入り乱れてかなりゴチャつくし、発言と回答を追いかけるのにかなり難儀する。
2点目は「スマホに更新通知が届く」という点。
(しかも自分の投稿や、追いかけたい投稿の更新だけが通知される)
これも重要なポイントだ。
通知が届くことによって、コミュニティが日々動いているのが伝わってくるし、発言へのレスがリアルタイムに伝わることでコミュニティへの帰属意識も高まるからだ。
ちなみにTwitterのグループDMやLINEグループだと全発言が通知対象になるため、スマホがブルブル震え続けて鬱陶しい事も多い。
またBuddyPressになるとRSSを登録したりして自分で能動的に更新を追いかける必要があるといった具合だ。
Facebookグループのデメリット
Facebookグループをインフラに選ぶ場合、もちろんデメリットもある。
こちらもデメリットと感じたポイントを2点ほど上げておこう。
1点目は「所詮はタイムラインに過ぎない」という点。
いくら「1投稿1スレ」感覚で使えるといっても、Facebookグループ内に投稿されたタイムラインに過ぎないため、古い投稿はどんどん流されて行ってしまうのに対して、サロンメンバーは同時参加する訳では無い。
このため、
- 最初に見て欲しい投稿(発言の規約や自己紹介スレなど)
- 一通り見て欲しい投稿(ハウツーなど主要な価値)
などが流れて行ってしまうのは、かなり厳しいだろう。
そこで色々と工夫して行くことになる訳だが、この辺りは運営者の手腕に寄るところが大きい。
ちなみに今回潜入したサロンの運営者さんは、
- 固定投稿
- メンバーしか入れない特別サイト
などを駆使する事でこの辺りの問題を上手くクリアされていて、かなり参考になった。
デメリットの2点目は「実名制」だ。
これはFacebookそのものにも言えることだが、ブロガーの場合、ブログも他のSNSアカウントもハンドルネームで運営している人は多い。
これに対してFacebookは現実社会の知人や友人とも繋がっている人が多いためか、ブログや他のSNSとはアイコンも名前も異なっている場合がある。
このため、何度やり取りをしてもブログや他のSNSアカウントと同一人物だと認識できない事も。。。
加えて、身バレしないよう気をつけてる、あるいは実名を公開したくないというブロガーにとっては、それだけで入会へのハードルが上がってしまうという問題もあって、実名じゃなければ参加するのに・・・という人もいるんじゃないだろうか。
最後に
以上のようにオンラインサロンのインフラ部分について見てきたが、まとめると、
- Synapseを利用する意義は見出せなかった。
- コミュニケーションのインフラとしてのFacebookグループは総合的にみるとかなり良い(ただしデメリットあり)。
といった具合だ。
個人的には、コミュニケーションのインフラについてはFacebookグループが今のところ一番良いみたいだという結論に至ったわけだが、もし他に良いインフラをご存じの場合はぜひ教えて欲しい。