【タイトル】ずるい考え方~ゼロから始めるラテラルシンキング入門~
【著者】 木村尚義 (著)
【読了時間の目安】1時間~
問題:13個のみかんを3人で分けなさい
こんな問題が出されたら何と答えますか?
- 13÷3 = 4 余り1
- 13/3 = 4 と 1/3
などでしょうか。
概ね「1人4個で最後の1個は3当分する」といった答えを返しますよね。
どちらも実に論理的な回答です。
では。
「それ以外」の方法は有りませんか?
こう聞かれたらいかがでしょう?
なかなか他の発想を思いつくのは難しいんじゃないでしょうか。
(とっさにいくつか候補が思い浮かんだ方は、そっと記事を閉じて下さい。。。)
そんな時に「飛躍した答えに辿り着く思考法」があります。
それが、本書で紹介する「ラテラルシンキング」という思考法。
本書は、この「ラテラルシンキング」を、様々な事例と演習問題を交えて紹介した書籍です。
ラテラルシンキングとは
冒頭の質問に「1人4個で最後の1個は3当分する」と答える。
このような「論理的な思考法」をロジカルシンキングと言います。
これに対して「コロンブスの卵」的な発想をラテラルシンキングと言います。
本書では、ラテラルシンキングについて、以下のように表現しています。
- 飛躍した答えに辿り着く思考法
- どんな前提条件にも支配されない自由な思考法
- 発想の枠を広げる思考法
要は、固定観念や常識にとらわれず、斬新でユニークな発想ができる。
それが、ラテラルシンキングということですね。
ラテラルシンキング と ロジカルシンキング
思考法の話題になると、よく「ラテラル」と「ロジカル」が比較されますが、その理由は、それぞれの思考法の特徴を並べてみるとよく分かります。
ロジカルシンキング(垂直思考)の特徴
ロジカルシンキングは、A→B→Cというように物事を順番に積み上げながら、筋道立てて正解を導いていく考え方です。
その特徴は以下の通り。
- 筋道を立てて論理的に回答を導き出すのが目的。
- 常識的・経験的に発想する。
- 思考の方向性は「深堀り(垂直思考)」
常識や経験から、妥当だと思われる「正解」を導くために、物事を論理的に掘り下げていくということですね。
ラテラルシンキング(水平思考)の特徴
ラテラル(Lateral)は直訳すると「水平」という意味。
ラテラルシンキングは、文字通り「水平方向に視点を広げる思考法」です。
なので、その特徴は以下の通り。
- 思考やアイデアの幅を拡げるのが目的。
- 常識や固定観念にとらわれず自由に発想する。
- 思考の方向性は「発散(水平思考)」
過程や筋道は関係なく、答えに直結するのであれば、どんなアイデアでもOKという考え方ですね。
ラテラルとロジカルは相互補完
「コロンブスの卵」的な発想と聞くと、ラテラルシンキングの方が優れているような印象ですが、「ラテラル」と「ロジカル」は、決して対立する考え方ではありません。
あくまで、ラテラルシンキングは「発想の転換ができる」という特徴があるというだけ。
それまで気付かなかったアイデアや、たくさんの選択肢が得られるというメリットがありますが、それらのアイデアが現実的かどうかは別の問題ですよね。
ラテラルシンキングで得られたアイデアは、1つずつロジカルシンキングで考察する必要があります。
なお、本書では、思考の順序について以下のように述べています。
思考の順序は、最初にラテラルで発想し、次の段階はロジカルで検討するといい。
なぜラテラルシンキングが必要なのか
では、なぜラテラルシンキングが必要なんでしょう?
冒頭の「問題:13個のみかんを3人で分けなさい」という質問でもお解りの通り、普通はロジカルシンキングで考えてしまいますよね。
原因は、学校で長い期間をかけてロジカルシンキングの考え方を教育されているため。
ところが、現実にはロジカルシンキングだけでは良いアイデアが導き出せないことも多々あります。
また、本書ではロジカルシンキングに偏った場合の問題として、以下を挙げています。
- 発想が貧しくなり、アイデアの数が減ってくる。
- 当たり障りのない答えを選ぼうとするため、つまらない発想しか生まれなくなる。
- 自説が正しいと信じて、他の考えをすべて否定するようになってしまう。
そういう時こそ、ラテラルシンキングの出番。
上手くブレイクスルーするためも、ラテラルシンキングを身につけておくと良い、ということですね。
最後に
というわけで以上をまとめると、以下の通りです。
- ラテラルシンキングとは、「コロンブスの卵」的な発想をする思考法。
- 垂直思考のロジカルシンキングと水平思考のラテラルシンキングは相互補完の関係。
- 思考の順序は、最初にラテラルで発想し、次の段階はロジカルで検討するといい。
本書では他にも、
- ラテラルシンキングに必要な3つの力
- 様々なパターンの課題と、抜け道的な思考(ずるい考え方)
などが紹介されています。
本書は「ラテラルシンキングの入口」にちょうど良い書籍です。
(ラテラルシンキングは、本書だけで身に付くというほど簡単な思考法でありませんが)
本書で一度ラテラルシンキングに触れてみてはいかがでしょう?
「13個のみかんを3人で分けなさい」の回答
あ、そうそう。
冒頭の「問題:13個のみかんを3人で分けなさい」という質問のラテラルシンキング的な回答を紹介してませんでしたね。
本書では、ロジカル・ラテラルを含め、4つの方法が紹介されています。
ロジカルシンキング的な回答
ロジカルシンキング的な回答として、次の2つが紹介されています。
- 方法1:4個ずつ分けて余った1個を3等分する
- 方法2:はかりを使って同じ重量ずつ分配する
方法1は冒頭で出てきた、いわゆる「算数」的な答えですね。
方法2は「公平に分ける」という目的に向かって、その方法を論理的に掘り下げているから、ロジカルシンキングとのこと。
ラテラルシンキング的な回答
ラテラルシンキング的な回答として、次の2つが紹介されています。
- 方法3:ジュースにして分ける
- 方法4:オレンジの種を植える(育てて分ける)
方法3は、ラテラルシンキングの模範のような答えですね。
「3人で分ける」と言われると、つい「現物のまま分けるものだ」と思い込んでしまいますよね。
その固定観念から上手く抜け出しています。
これに対して 方法4は、まるで投資家のような発想ですね。
そこまで待てのるか?という問題はありますが、柔軟でなかなか面白い回答だと思います。
ラテラルシンキング的ジョーク
そううえば。
本書には、こんな「ラテラルシンキング的ジョーク」も載っていました。
NASAは、無重力状態ではボールペンが使えないことを発見した。
ボールペンは重力によってインクを送り出すため、重力のない世界では文字が書けない。
そこで科学者たちは、莫大な費用をかけて、宇宙空間でも使えるボールペンを開発した。
一方、その頃、ソ連では・・・
このあとオチが続くんですが、どんなオチか分かりますか?
少し考えてみて下さい。
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考えました?
このジョークのオチはこれ。
鉛筆を使っていた……。
旧ソ連のみなさんにちょっと失礼な気もしますが、あくまでジョークということで・・・。
目次
- ◆ラテラルシンキングってどんな思考法?
- ◆13個のオレンジを3人で分けるには?
- ◆なぜ、ラテラルシンキングが必要なのだろう?
- ◆あなたの身近にあるラテラルシンキング
- ◆疑う力 ~固定観念を打ち破る~
- ◆抽象化する力 ~物事の本質を見抜く~
- ◆セレンディピティ ~偶然の発見を見逃さない~
- ◆努力しないで大きなリターンを得るには?
- ◆ケース1 小さな工夫で定時離陸を実現した航空会社
- ◆弱者が生き抜くための3つの方法
- ◆ケース1 トップ企業にはりついた化粧品メーカー
- ◆ケース2 「業界第2位」をアピールしたレンタカー会社
- ◆新しい価値は「組み合わせ」から生まれる
- ◆ケース1 スティーブ・ジョブズのマッチングセンス
- ◆ケース2 ユニークな喫茶店 成功の秘密
- ◆目先の利益だけを追求しない
- ◆ケース1 やがて生まれる需要に賭けた松下幸之助
- ◆ケース2 未来の世界を見通したトーマス・エジソン
- ◆ケース3 有利な報酬を選んだジョージ・ルーカス
- ◆ムダなものは本当にムダなのか?
- ◆ケース1 タダのものを生かした浅野総一郎式ビジネス
- ◆ケース2 “もったいない”がもたらしたノーベル賞
- ◆「ダメな部分」に隠れている宝物を探そう
- ◆ケース1 小林一三の逆転発想
- ◆ケース2 夕張市「負の遺産」を学ぶツアー
- ◆Q1 何もない宿泊施設
- ◆Q2 ある喫茶店主の深い悩み
- ◆Q3 海外から押し寄せる質問メール
- ◆Q4 新しい調味料を売る方法
おわりに